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《敬語のキホン》見直そう、「させていただく」症候群

ビジネスメールや会話で頻出する「〇〇させていただく」、皆さんは正しく使えているだろうか。「相手に丁寧に伝えよう」という気持ちが先行してしまい、必要以上に使ってしまう人がかなりいます。正しい使い方を身につけ、「出来る大人」を目指しましょう。

文化庁は「敬語の指針」の中で、「させていただく」を以下の通り定義しています。

基本的には自分側が行うことを、
ア)相手側又は第三者の許可を受けて行う
イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある
場合に使われる。

文化庁ウェブサイト「敬語の指針」より

上記の2つの条件を見ると、使う場面はかなり限定されるはずですが、ビジネスシーンではとにかく相手に少しでも丁寧に言おうとして必要以上に使っている人をよく見かけます。

正しい例、間違った例を見てみましょう。

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正しい使い方

①午前中に体調が悪くなってしまった時、
「本日の午後、早退させていただけますでしょうか。」
と上司に伝える。

②相手に同行する許可を得る時、
「ご一緒させていただいてもよろしいですか。」
と依頼する。

①と②のどちらも相手の許可を取り、そのアクションを取ることで自身にメリットがあるため、正しい使い方の条件を満たしています。

ただし、②は例えば有名人が「先日、〇〇の番組で□□さんとご一緒させていただいたんですが、・・・」と言うのは間違いです。ご一緒することを決めたのは番組プロデューサー/スタッフであり、この発言者がお願いして許可を得たものではないので、「ご一緒したんですが」で良いです。

間違った使い方

①「先程、〇〇の件でメールを送らせていただいたのですが、ご覧いただいておりますでしょうか」

相手に許可を求めた訳ではなく、こちら側が勝手にメールを送っているので、間違った使い方です。「〇〇の件でメールをお送りしましたが」で十分でしょう。

同じような使い方ですが、

②「〇〇の件をお知らせしたいと思い、お電話をさせていただいております」

これも相手の許可を得ている訳ではなく、一方的に電話をしているので、「お電話いたしました」でいいでしょう。

③「お陰様で弊社は創立50周年を迎えさせていただきました」

普段からお世話になっている顧客があってこそ企業は長く続いていくものですが、誰かの許可を得て経営を続けている訳ではないので、「50周年を迎えました」が自然でしょう。

「結婚10年目を迎えさせていただきました」も同じですね。
日頃から配偶者を怒らせ、離婚届を突きつけられても何とか許しを得ながら結婚生活を続けているなら当てはまらなくもないですが、「10年目を迎えました」で十分です。

④「ご報告させていただきます」「ご説明させていただきます」

この場合はややグレーですが、報告/説明するのは相手にメリットのある場合が多く、許可を得なければならないシーンはほとんどないので、「ご報告いたします」「ご説明いたします」とシンプルにする方がいいでしょう。

⑤「本日、担当を務めさせていただきます、〇〇です」

BtoBの場合、担当はその人の会社/上司が決めることがほとんどで、BtoCの場合も偶然目の前にいたスタッフが担当するケースがほとんどで、顧客側が選ぶことはほとんどありません。

そのため、相手の許可を得ることは必要ないので、「本日、担当いたします」で十分でしょう。

シンプルに伝えよう

ここまででお気づきになった方も多いと思いますが、過度に「させていただく」を使う必要はなく、「〇〇です」「〇〇いたします」と置き換えられることがほとんどです。

少しでも“出来る大人”と思わせるために、できる限り丁寧な言葉を使いたいという気持ちもわかりますが、敬語を正しく使えないと“出来ない大人”であることが露呈してしまうため、スマートな言い回しができるように、普段の会話から気を付けてみましょう。

OUT A TIMES編集部