後世に語り継ぎたいノムさんの名言

野村克也氏 名言
2019年スワローズのレジェンドマッチにて

戦後初の三冠王、歴代二位の657本塁打、現役時代はプレイングマネージャー、そして引退後もヤクルト、阪神、楽天で監督を務め、ヤクルトの黄金期と楽天初のポストシーズンへと導いた「ノムさん」こと野村克也氏が2020年2月11日に天国へ旅立たれました。

日本球界が誇る至宝が残した功績は計り知れません。

「ボヤキ」で有名だったノムさんは監督時代のミーティングや著書で数々の名言を残されています。ビジネス論や人生論に通ずるものも数多く、その一部をご紹介します。

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リーダー論 / 指導者論

人を遺すを上とする。

同じくノムさんの名言に「金を残すは三流、名を残すは二流、人を残すは一流」があります。人の命は有限であるため、日本球界や企業のような組織では、今まで先人たちが積み上げてきた遺伝子(知識・経験)を次の世代に繋げていくことが重要です。実際に、ノムさんの教え子の多くがプロ野球監督・コーチ等の指導者になっています。

組織はリーダーの力量以上には伸びない。

リーダーはチームの模範とされるべき存在であり、リーダーの力量によってすべてが決まります。企業も「社長の器以上に成長しない」とも言われることがあります。

中心なき組織は機能しない。

ノムさんは監督時代、常に「チームはエースと四番で決まる」と口癖のように言っていました。力が優れているだけでなく、投打リーダーは人間的にも他の選手の見本であることをノムさんは求めていました。

人を判断するときは決して結論を急がないこと。

成長速度は人によってそれぞれ異なります。大器晩成型の選手がいるように、リーダーが想定しているスピードで成長していなくとも、後々大きく飛躍することもあります。リーダーの先入観だけで「こいつは思ったほど伸びない」と思い込むのは危険であり、じっくり一人ひとりの資質を見極めることが重要です。

部下を「信じる」というのは、リーダーの重要な資質。

チームスポーツは一人の活躍だけで勝てることはほとんど無く、170kmの剛速球を投げるピッチャーがいたとしても、守ってくれる野手がいて、そして彼らが点を取ってくれるからこそ勝利に向かって進めます。どんな組織も同じように仲間・部下を頼り、それぞれが力を発揮して初めて成功へと進むことができます。

好かれなくても良いから、信頼はされなければならない。嫌われることを恐れている人に、真のリーダーシップは取れない。

仲間を信じるだけでなく、リーダーは仲間に信頼されることが最も重要です。「中心なき組織は機能しない」 「チームはエースと四番で決まる」 という名言と同じで、時には嫌われ役をしたとしてもチームの模範となり、引っ張っていくリーダーシップが求められます。

言葉の裏に愛情がない限り、どんな言葉も胸には突き刺さらない。

本気で自分のことを考えてくれている人からの言葉は説得力が強く、有効なアドバイスとなることが多いです。逆に、無責任に発せられるだけの言葉は無機質なものであり、心に深く刻まれることはありません。

覚悟に勝る決断なし

重大な局面であるほど、その判断を裏付ける理由と、それを実行する覚悟が必要となります。

勝負論 / チーム論

勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。

相手のミスで不思議と勝ってしまう時もありますが、負ける時は必ず自軍に何かしらの原因がある。その原因を分析できないままだと「不思議の負け」となってしまい、また同じ失敗を繰り返してしまいます。

優勝というのは強いか、弱いかで決まるんじゃない。優勝するにふさわしいかどうかで決まる。

日本プロ野球は140試合という長いシーズンを戦い抜き、優勝が決まります。単純に戦力(ここの選手の能力)だけで測るならば、セ・リーグは巨人、パ・リーグはソフトバンクが毎年優勝してもおかしくありませんが、実際にはそうなっていません。優勝するためにふさわしいチーム作りが重要となるのです。

1年目には種をまき、2年目には水をやり、3年目には花を咲かせましょう。

最初から結果を追い求めるのではなく、長期的な視点を持ってチーム作りや戦略を立てることが重要です。

ID野球の極意は、重い予備知識と軽い先入観。

「ID(= Important Data)野球」と言っても、単に膨大なデータを頭の中に入れるだけで勝てるほどプロの世界は甘いものではありません。それは、一瞬の判断でプレーが変わり、その積み重ねで勝敗が決まるからです。そのため、データをしっかり整理して試合に備え、プロとして培った試合勘(先入観)をうまく組み合わせることで、一瞬の判断をより正確なものにしていくことができます。

コンピュータがどんなに発達しようとしても、仕事の中心は人間だ。ならばそこには「縁」と「情」が生じる。それに気づき、大事にした者がレースの最終覇者となるのだと思う。

一般企業の仕事でも自動化が進んでおり、コンピュータやシステムに頼りきりな場面もあります。しかし組織を組み立てたり、判断を下すときには、機械によってはじき出された数値だけでなく、人的評価も必要となります。

成長論

努力は天才に勝る

ノムさん自身、テスト生としてプロの世界に入り、戦後初の三冠王という大打者へと昇り詰めました。そこには並大抵の努力があったと推測できます。ちなみにノムさんは王貞治氏が練習を欠かさない姿を見て、「ああ、俺の記録はいつかこいつに抜かれるんだろうな」と思ったそうです。ノムさん以上の努力家がホームランの世界記録を作りました。

「恥ずかしい」と感じることから進歩は始まる。

己の未熟さを知り、弱点を克服してこそ次のステージに進めるというもの。自分自身の課題に気付き、「恥ずかしい」と思うことが成長への第一歩となります。

うまくいっているときは、周りに人がたくさん集まる。だが、一番大切なのは、どん底のとき、誰がそばにいてくれたかである。

どん底の時にそばにいてくれるのが真の仲間です。お互いを支えあうことで、チーム力は何倍にも膨れ上がります。

限界が見えてからが勝負だ。

どんな分野でもプロの世界ではちょっとやそっとの努力で簡単にレベルアップできるということはありません。努力を繰り返した末に苦しくなってしまった時に、そこで諦めてしまうのか、それともそこからさらなる努力を続けられるのかが、成長へのターニングポイントとなります。

変化することへの恐れを捨てよ。

野村再生工場の真理となる言葉です。
衰えやケガで上手くいかなくなったとき、新たな武器を得ることは非常に重要です。ただし、新しいことが成功する保証はないため、挑戦するには勇気がいります。
江夏豊投手をクローザーに転向させたり、川崎憲次郎投手にシュートを覚えさせたり、ノムさんは様々な選手に第二の花を咲かせました。

どうやったらライバルとの競争に勝てるか考えたとき、1日24時間の使い方の問題だ、と思った。

生まれ持った身体能力や才能は人それぞれ異なりますが、「1日24時間」というのは全ての人間に平等に与えられています。努力を重ねてもライバルに勝てない時、時間の使い方を変えることが新たな成長のきっかけとなることもあります。

敵に勝つより、もっと大事なことは常に自分をレベルアップすること。

「勝ちに不思議の勝ちあり」という名言の通り、幸運にも勝ってしまうことがあり、それだけでは次も勝てるとは限りません。自らを進化し続けられれば次も、そしてその次も勝利への足掛かりが見えてくるものです。

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